よく、そば通や著名人が「天ぬき」「天抜き」という頼み方をしているのを聞いたことはありませんか?
これ、結構誤解しやすいので解説します。
江戸っ子言葉として浸透?
江戸時代、そばは空前絶後の大ブーム。
一説には現在のコンビニより多かったと言われています。
屋台が中心でしたが、酒が飲める店舗型のそば屋も大繁盛。
居酒屋が定着していない時代、酒を飲むというとそば屋が定番でした。
つまみは天ぷら、卵焼き、焼鳥(串なし)、焼き海苔などがありました。
このそば屋の天ぷらは、天ぷら屋の天ぷらとは違い、塩や天つゆで食べるのではなく、そばつゆに入れて食べるように出来ているので根本が違います。
諸説ありますが、天ぷら屋は食材を活かすために薄力粉を使い、そば屋はつゆが染みる事を前提で強力粉を使うのが一般的です。
そんなそばつゆシミシミの天ぷらをつまみにしたというのが起源みたいですね。(諸説あり)
そこに色々と脚色がついてきます。
例えば、酒のつまみに天ぷらそばを頼むとそばが伸びてしまう、そばはゆで立てが一番美味いから先に天ぷらだけ頼んだみたいな話ですね。
天ぬき、天抜きとは
天ぬき、天抜きって言葉を聞くと
「天ぷらそばから、天(ぷら)を抜いて」
と勘違いしてしまいますが、実際の意味は
「天ぷらそばから、天井だけ抜いて」
という意味です。
は?って感じですよね。
天ぬきの天は天ぷらではなく、天井の意味です。
天ぷらそばを天ぷらは天井(上)、そばは台(下)と定義した場合の言葉なんです。
他にも天ぷらだけでなく、上にあるものだけを抜き取ることができます。
抜いたものを食べるんですね。
鴨抜き(鴨南蛮の鴨抜き)
おかめ抜き(おかめそばの蒲鉾、湯葉、椎茸抜き)
山菜抜き(山菜そばの山菜抜き)
肉抜き(肉そばの肉抜き)
コロッケ抜き(コロッケそばのコロッケ抜き)
など、バリエーションが豊富です。
言い方的に、鴨南蛮そばの天ぬきも一応通用します。(鴨抜きがでてきます)
言葉としてどうなの?
言葉的には間違っています。
まあ、わかると思いますが……。
抜いた方を食べているわけですから。
略し言葉の一つではあると思うのですが、一番意味を伝えられる「そばのそば」を抜くというのは思い切ったセンスですよね。
何故、間違った言葉が浸透してしまったのか
そば好きって通ぶる人が多いというのは、わかりますでしょうか。
端的に言えば「知識・教養をひけらかす見栄張りの気取り屋」が多いという事です。
そばに限った事ではないのですが、そういう人達が見栄を張ろうした結果産まれた可能性が高いのではないかと思います(個人的解釈)。
天抜き十年って言葉があります。
これも俄かに信じがたいのですが、そば屋の常連になって十年経つと頼めるようになる裏メニューというのが「天ぬき」なのです。
仲良くなるのに十年もかかるそば屋なんて行きたくもありませんね。
そんな通ぶるそば好きが誇張して広めたものだと考えます。
だから、一見わかりにくく、聞いた周りの人達がハテナを浮かべればこっちの物。
その人は、声高に威勢よく鼻高々に語り出すでしょう。
間違った言葉でも彼らに取っては承認欲求を満たす道具だったのかもしれません。(超個人的見解)
関西では
関西では天ぬきとは言わずに、天吸いと言います。
「天ぷらのお吸い物」という意味で、よく聞く肉吸いもこれに含まれます。
向こうはそばではなく、うどん文化なので肉吸いは「肉うどんからうどんを抜いたもの」が正解です。
使った方がいい?
使った方がいいのかって話の前に、通じるかどうかを調べてきました。
メニューに天ぬきがないお店限定です。
都内のそば屋、20件くらいですかね、注文してきました。
そば屋で通じるのは70%くらいです。
ホールさんは知らないけど、奥にいるそば職人は知っているみたいなパターンもありました。
まあ、通じる方でしょう。
ただ、メニューにない場合はあるかどうかを聞いた方がいいですね。
また、メニューにそのまま天ぬきがあるそば屋もあります。
富士そばなんかはちょい呑みできる店舗が一部あります。
その店舗では通常メニュー以外に、ちょい呑みメニューがあり、そこに天ぬきがあるので気軽に頼めます。
結局、天ぬきとは何なのか
天ぬきとは、そば屋のつまみです。
天ぷらの味、そばつゆの味が一発でわかるので最初に頼むのが通とか言う人がいますが、そばを食べずにどうなんだという話もあります。
あったら頼んでみるのも一興かもしれませんね。
そばつゆにひたひたになったかき揚げ。
美味しいですよ。
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